2025年度から、私立高校の授業料支援金を現行の39万6千円から45万7千円に増額する方針が現実味を帯びてきました。これにより、私立高校の学費負担が軽減され、より多くの生徒が私立高校を選びやすくなると期待されています。
しかし、支援の拡充はすべての家庭や生徒にとって一律にメリットとなるわけではありません。支援金の増額によって生じる可能性のある課題について整理し、高校選びの際に考慮すべきポイントを解説します。

① 私立高校の志願倍率の上昇
支援金が増額されることで、経済的な理由で公立高校を選んでいた家庭も、私立高校を志望しやすくなります。その結果、人気のある私立高校では志願者が増加し、倍率が上昇する可能性があります。
特に、進学実績の高い学校や特色ある教育を提供する学校は、志望者が集中しやすくなります。たとえば、スポーツや商業、英語など、特定の分野に特化した学科は、これまで以上に倍率が激しくなるかもしれません。
➡ 私立高校の受験を検討する際は、併願校の選択肢も含め、柔軟な進路計画を立てることが重要です。
② 公立高校の志願者減少と統廃合のリスク
私立高校の志願者が増える一方で、公立高校の志願者が減少する可能性があります。特に、進学と就職の両方に対応している公立高校では、定員割れが続くと統廃合が進む可能性もあります。
たとえば、松本市周辺の田川高校や美須々ヶ丘高校のような学校は、これまで「私立よりも学費が安く、大学進学や就職に対応できる」という理由で選ばれてきました。しかし、支援金の増額により、より手厚い指導が受けられる私立高校を選ぶ家庭が増えれば、こうした公立高校の志願者数が減少し、将来的に学校の再編が進む可能性もあります。
➡ 通学可能な公立高校が減少すると、地域によっては通学時間の増加や選択肢の制限が生じることが考えられます。
③ 私立高校の「実質的な学費負担」は依然として高い
授業料支援金が増額されたとしても、私立高校では施設費、教材費、制服代、修学旅行費、部活動費などの追加費用がかかるため、実質的な学費負担は依然として公立高校よりも高い場合がほとんどです。
📌 例:長野県の私立高校の年間費用(概算)
(詳しくは各学校にお問い合わせください!)
• 松商学園高校:授業料+施設費+教材費などで年間60万円以上
• 松本国際高校:学科やコースによっては年間70万円以上
• 都市大塩尻高校:指定校推薦枠が魅力だが、進学のための塾費用が別途必要になることも
➡ 「授業料の負担は減るが、他の費用は自己負担」という点を考慮し、トータルの学費を試算することが大切です。
④ 私立高校のカリキュラムが合わない可能性
私立高校は学校ごとに独自のカリキュラムを設けていますが、その分、公立高校に比べて自由度が低く、生徒の適性に合わない場合もあります。
たとえば、進学校では難関大学受験を前提とした授業が組まれているため、部活動と両立しながらのびのびと学びたい生徒には厳しく感じられることがあります。また、専門学科のある学校では、途中で進路を変更しても、普通科への転科ができないケースもあります。
➡ 進学実績や学習内容がすべての生徒に適しているわけではないため、学校の方針を十分に理解した上で選択することが必要です。
⑤ 公立高校の教育環境への影響
公立高校の生徒数が減少すると、学校の予算が削減され、教育環境が悪化する可能性があります。特に、地方の公立高校では、教員の配置や設備投資の優先度が下がる可能性が指摘されています。
公立高校の教育の質が低下すれば、結果的に私立高校への流れが加速し、教育格差が広がることも懸念されます。
➡ 公立高校の役割がどう変わるのか、今後の教育政策の動向を注視することが求められます。
まとめ:高校選びは慎重に!
私立高校の支援金増額により、私立高校の選択肢が広がる一方で、以下のようなデメリットも考えられます。
私立高校の倍率上昇で希望校に合格できない可能性
公立高校の志願者減少による統廃合のリスク
私立高校の実質的な学費負担は依然として高い
カリキュラムの自由度が低く、合わない場合がある
公立高校の教育環境が悪化する可能性
支援拡充は、公立・私立の両方に影響を与えるため、「学費が安くなるから私立を選ぶ」という短絡的な考えではなく、教育内容や進路、家庭の経済状況を総合的に考えた上で最適な選択をすることが重要です。
今後の政策の動向を注視しつつ、お子さんに合った学校を選ぶために、しっかりと情報を集めていきましょう。
高校進学が近いご家庭では、気になっている学校の学校説明会や、公開イベントなどに足を運んでみるのが一番です。
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