突然ですが、質問です。
Q:ご自身のお子様には、どのくらいの語彙力があると思いますか? A.語彙力は平均より多い
B.語彙力は平均的
C.語彙力は平均より少ない
この質問にすぐに答えあれた方もいらっしゃれば、「何を示して平均とするのか分からないから答えられない」方もいるとお思います。
次の質問です。
Q:ご自身のお子様と「言葉」の関係を考えてみると、お子様はどのようなタイプでしょうか?
以下は例です。
話し好きで説明が上手。
話し好きだけだけど、説明はうまくない。
言葉がうまく出て来ないけど、物知り。
言葉がうまく出てこなくて、手が出てしまう。
言葉で表現するよりも、体や絵を通じて表現した方が得意。
話すのが苦手だけど、聞くのは得意。
読書が大好きだ。
パソコンで知りたいことを調べて説明を読みながら、好きなことに取り組んでいる。
子供にはいろんな子がいます。
極端な例ですが、外国から移住してきたお子さんが、いきなり日本語だけの環境に入ったときに、言葉が分からず馴染めない、幼稚園や保育園に行きたがらない場合等もあります。
社会生活の中で、言葉を知っていることは生きる糧になり、生活の質を高めることにもつながっています。
今日は、言語教育にかかわる一員として、子供たちの日本語の語彙数について考えてみたいと思います。
(1) 小学校に通う前の子どもの語彙数は約 4000~5000 語
小学校に通う前の子どもたちは、家庭で多くの時間を過ごし、家庭の中で言葉を獲得します。
また、この時期に多くの幼児が幼稚園や保育園に通います。家庭以外に子どもたちが長く時間を費やす園での生活の中で、新たな言葉を獲得しています。
その他に、人との交流や、おでかけ、習い事、様々なメディアに触れる等、あらゆる場面で、子供たちは言葉を獲得していきます。
(2)幼児期の言葉教育の重要性
文部科学省では、幼稚園修了までに育つことが期待される生きる力として、以下の5つの項目をあげています。
「健康」
「人間関係」
「環境」
「言葉」
「表現」
それぞれの具体的なねらいと内容については、文部科学省による以下の資料をご覧ください。
大きく掲げられている5つの項目の中で、「言葉」があります。
子どもたちが生きる力として、必要な言葉にはどのようなものがあるのでしょうか。
(1 )自分の気持ちを言葉で表現する楽しさを味わう。
(2) 人の言葉や話などをよく聞き,自分の経験したことや考えたことを話し,伝え合う喜びを味わう。
(3) 日常生活に必要な言葉が分かるようになるとともに,絵本や物語などに親しみ,先生や友達と心を通わせる。
ここでは①自己表現の重要性が第一に挙げられており、続いて②他者とのコミュニケーションの場面で相互に理解しようとする力、また③自分が未知のことについても理解しようとする力を培うことで、生きる力につながると述べられています。
(3)小学生向け国語辞典に収められている語彙数は?
2010年は20,000語→2020年42,500語で2倍以上に!
日本の大手辞書出版社である三省堂によると、2010年の小学生向け、国語辞典に収録されていた語彙数は、2万語程度でした。
しかし、2020年版での語彙数は、42,500語までに増えています。 (出典 https://dictionary.sanseido-publ.co.jp/dict/ssd13836)
時が進むにつれて、新しいものが発明され、人の往来が激しくなることで外来語が増え、AIやテクノロジーの台頭など新分野に関する言葉も増してくる中、収録語彙数がぐっと増えてきています。
(4)日本人の読解力が低下している?
2019年12月3日に公表された国際学習到達度調査(PISA)で、日本の読解力は15位と、前回調査時の8位から大幅に順位を落としました。
その原因として、①読書量の低下と②日本の教育におけるICT活用の遅れが指摘されています。
①読書量の低下
日本の子供たちが、本を読まなくなっている現状は、ご家庭でも感じ取られている保護者の方がいらっしゃるかもしれません。その傾向は、学年が上がるとより顕著となり、高校生のおおよそ半分の子供たちが、あまり本を読みません。
また高校生の1割程度は、読書をしない理由として「文字をよく読めない」という理由を挙げています。
各年齢層に応じて、読書が果たす役割は様々です。各年齢層にどのような読書能力があるのか、上記の表を簡単にまとめてみました。ご自身のお子様の年齢を当てはめて読んでみてください。
0~3歳 前読書期:話し言葉中心、文字を意識し、絵本に興味を示す。
4~5歳 読書入門期:読み聞かせ、なぞり読み、1文字読みをしながら自分で読もうとする。
6~8歳 初歩読書期:速度は遅いが、独立して読むことを楽しむ。本を読むことが習慣化され、1冊の本を読んで創造的に読むことができる。
9~13歳 多読期:あらゆるジャンルの本を読み読書スピードもアップする。語彙が飛躍的に増加する。内容を評価・鑑賞することができる。発達の分かれ目となる時期。
14~18歳 成熟読書期:多読傾向は減少し、読書から共感・感動を求める。読書の目的や資料に応じて、読書技術をもって本を読むレベルになる。
このようにそれぞれの年齢層によって、読書が果たす役割が多いことが分かります。いかがでしょうか。お子様は年相応の読書体験をしていまるでしょうか?
②課題となっている日本のICT教育
数学的リテラシー(リテラシー:識字能力(1位)、科学的リテラシー(2位)は世界トップレベルなのに対して、読解力の国際順位が下がった原因として、ICT教育で遅れをとっていることを専門家は指摘しています。
具体的には、この調査自体がコンピューターを使用して実施をされたのですが、日本の子供たちのコンピューターリテラシー(リテラシー:識字能力)が乏しく、設問をうまく理解できていなかったのではと指摘されています。
https://diamond.jp/articles/amp/233729 (広告を見ると記事を読めます)
シンガポールやフィンランド等、ICT教育が進んだ地域と比べると、日本の子供たちは、ゲームやチャットなどでスマホを使う場面は多くありますが、学習の場面でコンピューターを使う場面が他の先進国と比べて少ないです。
そのため、現代人が必要とされている分野での言語教育において遅れをとっており、例えばWeb上の説明を理解できない、パソコンやタブレットの指示や説明に従えない子供たちも多くいるようです。
(5)家庭でも「我が子」の語彙力は高められる
一口に「読書量を増やす」「コンピューターリテラシーを高める」と言われても、ピンとこないと思います。
子どもの語彙力を増やすためには、家庭でできることがたくさんあると思います。
上記の記事で、 南雲国語教室の南雲先生は、以下のような提案をしています。
①言葉を教えるといった意図をもって対話する。
子どもの話を別の表現で受け答えする
子どもと一緒に体験しながら、感じたことを言う
テレビなどを見ながらコメントする
②言葉を使って遊ぶ
しりとりや連想ゲーム
なぞなぞ、クロスワードパズル
俳句など五七五の表現
ジョークやシャレなどで遊ぶ
上記の内容はとても初歩的なものに感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、私自身教室生とお話をしていると、本気で悩んでいる子どもたちがいます。
「友だちの話や冗談が通じない。」 「授業で発言を求められると、なんていえばいいのか分からない。」
「なぞなぞやクイズ番組を見ても、そもそも知識がなくて面白いと思えない。」
「ドラマを見ているけど、お話についていけず理解できない。」
「国語の授業で漢字はわかるけど、単語(例:「ふと」、「ひょっとして」、「思いの外」)の意味が良くわからないものがある。」
等の話を聞くことがあります。
(6)すべての教科理解の基礎に国語力がある
国語は、すべての教科の理解において基礎となります。また、学校を卒業した後にも、日本社会で生活をするためには、日本語の理解が不可欠です。
こちらは英語教室ですが、最近子どもたちの日本語能力・教養の程度に大きな格差があることを実感しています。
ご家庭でも、まず国語教育で取り組めることを始めてみてはいかがでしょうか。子どもたちの使う言葉がワンパターンではないか、成長を感じ取れるかどうか、意識してみるのも一つだと思います。
今後、メルク英語教室でも英語の語彙獲得を通じて、日本語の語彙力と教養を高める一助ができるように指導したいと思います。
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